第3章
建物の維持・更新のあり方の見直し
この章では、長寿命化による維持・更新コストの縮減・平
第3章
建物の維持・更新のあり方の見直し
1.長寿命化による効果の見通し
これまでは、建物の維持・更新に係る明確な方針が整備されず、個別に対応しているのが一 般的な現状でした。過去に建てられた多くの建物は経年による老朽劣化が進行しています。
厳しい財政状況の下では、老朽化した建物を従来どおり建替えることは困難です。今後は大 規模改修を実施し、建物の長寿命化を図る必要があります。さらに、計画改修時に築後55
年以上経過した建物は残りの寿命が短いため、中規模修繕のみを実施する等、建物を長期に 活用する場合の条件を仮定し、将来の維持・更新コストをシミュレーションすることで長寿 命化による効果の見通しを把握します。
(1)コスト推計の方法
[大規模改修][建替え]にかかる平成 26年度からの 40 年間のコストを次の条件により試 算します。
<共通試算条件>
建替え及び大規模改修の費用を次のとおり振り分けて計上 ・建替え :3年間
・大規模改修 :2年間
建替えは築後50年と70年で実施し、単価は用途別に設定(バリアフリー対応等、社会的改修 を含みます。)
大規模改修は築後35年で実施し、単価は用途別に設定(下記参照)
全建物に毎年3,000円/㎡の老朽箇所の修繕を実施することと仮定します。 (緊急修繕・部分補修、設備機器の補修等の改修工事以外の修繕コスト)
学校施設の大規模改修の積み残しは、平成26年度から平成35年度の10年間で実施し、学校 以外の施設は平成26年度から平成30年度の5年間で実施することと仮定します。
建替えの積み残しは、平成26年度から平成35年度の10年間で実施することと仮定します。
単価表
出典:総務省 更新費用試算ソフトにおける単価を採用
大規模改修
市民文化系 25 万円/㎡ (バリアフリー対応等社会的改修含む) 社会教育系 25 万円/㎡ (バリアフリー対応等社会的改修含む) スポーツ・レクリエーション系 20 万円/㎡ (バリアフリー対応等社会的改修含む) 学校教育系 17 万円/㎡ (トイレ改修等社会的改修含む) 子育て支援 17 万円/㎡ (バリアフリー対応等社会的改修含む) 保健・福祉 20 万円/㎡ (バリアフリー対応等社会的改修含む) 学習館 25 万円/㎡ (バリアフリー対応等社会的改修含む) 行政系 25 万円/㎡ (バリアフリー対応等社会的改修含む) 供給処理 20 万円/㎡ (バリアフリー対応等社会的改修含む) その他 20 万円/㎡ (バリアフリー対応等社会的改修含む) 普通財産 17 万円/㎡ (バリアフリー対応等社会的改修含む) 建替え
市民文化系 40 万円/㎡ (解体費含む) 社会教育系 40 万円/㎡ (解体費含む) スポーツ・レクリエーション系 36 万円/㎡ (解体費含む)
学校教育系 33 万円/㎡ (解体・グラウンド整備費含む) 子育て支援 33 万円/㎡ (解体費含む)
(2)
50
年で建替える場合
一般的な築後50年での建替えを行う場合、すでに50年の寿命を迎えている建物から順次 建替えを実施する必要があります。この場合は最初の20年間の財政支出が大きくなり、平 成18年度から21年度までにおける市民関連施設の平均投資的経費の約29.5億円(※) を大きく上回ってしまいます。
築後50年の建替えの場合、40年間で年平均60 億円、最初の20年で年平均 83億円、 次の20年で年平均37億円のコストがかかります。
修繕コストには耐震、環境等の建物の性能向上のコストや、建物の延命化のためのコストは 含まれていません。
約29.5億円の投資的経費(※)は今後、下回ることも想定されます。
※公共施設白書より
施設は建替えにあたり規模が大きくなるのが通常ですが、ここでは現状面積の建替えで+α の面積は見ていません。また、現状ある施設だけの建替えで、今までにない用途の施設の整 備費も入っていません。(新たな需要に対応できない。)
0 20 40 60 80 100 120 140 160 H 18 H 19 H 20 H 21 H 22 H 23 H 24 H 25 H 26 H 27 H 28 H 29 H 30 H 31 H 32 H 33 H 34 H 35 H 36 H 37 H 38 H 39 H 40 H 41 H 42 H 43 H 44 H 45 H 46 H 47 H 48 H 49 H 50 H 51 H 52 H 53 H 54 H 55 H 56 H 57 H 58 H 59 H 60 H 61 H 62 H 63 H 64 H 65
億円
40
年間
59.9
億円
/
年
40
年間
2,398
億円
最初の
20
年間
83.3
億円
/
年
次の
20
年間
36.6
億円
/
年
建替え 大規模改修 積み残し建替え
積み残し 大規模改修
市民関連施設の平均投資 的経費29.5億円
(平成18年度~21年度)
(億円)
合計 年平均 合計 年平均
建替え 718.84 35.94 275.19 13.76 994.03 24.85
大規模改修 233.81 11.69 253.91 12.70 487.72 12.19
修繕 202.60 10.13 202.60 10.13 405.20 10.13
積み残し建替え 131.27 6.56 131.27 3.28
積み残し大規模改修 379.76 18.99 379.76 9.49
合計 1,666.28 83.31 731.70 36.59 2,397.98 59.95
平成46~65年
40年合計 年平均
平成26~45年
建替えと 大規模改
修が重なる
(3)
50
年建替えから
70
年建替えへ(長寿命化)
コンクリートの寿命は、施工や維持管理の状態によりますが60~70年は持つとされてい ます。今後、市の施設は、状況に応じて築後概ね50年目にコンクリートの劣化試験を行い、
70年寿命を目標に大規模改修を実施して、長寿命化を図るものとします。
一般的な築後50年での建替えを実施せず、大規模改修を実施して、70年での建替えにす ることにより、最初の20年間にかかるコストを年平均83億円から45億円へと約46%
縮減します。また、40年間では約2,398億円から1,915億円と約20%縮減します。
※鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数は実証されていないのが現状ですが、(社)日本建築 学会の建築工事標準仕様書では、供用限界期間(*)で通常のメンテナンスを実施するこ とにより耐用年数を65年とし、適切な管理を実施することにより100年としています。
*供用限界期間:継続使用のために大規模な補修が必要になることが予想される期間 (億円)
合計 年平均 合計 年平均
建替え 93.14 4.66 704.12 35.21 797.26 19.93
大規模改修 233.81 11.69 98.76 4.94 332.57 8.31
修繕 202.60 10.13 202.60 10.13 405.20 10.13
積み残し建替え 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
積み残し大規模改修 379.76 18.99 0.00 379.76 9.49
合計 909.31 45.47 1,005.48 50.27 1,914.79 47.87
年平均
平成26~45年 平成46~65年 40年合計
0 20 40 60 80 100 120 140 H 18 H 19 H 20 H 21 H 22 H 23 H 24 H 25 H 26 H 27 H 28 H 29 H 30 H 31 H 32 H 33 H 34 H 35 H 36 H 37 H 38 H 39 H 40 H 41 H 42 H 43 H 44 H 45 H 46 H 47 H 48 H 49 H 50 H 51 H 52 H 53 H 54 H 55 H 56 H 57 H 58 H 59 H 60 H 61 H 62 H 63 H 64 H 65
億円
40
年間
47.9
億円
/
年
40年間
1,915億円
最初の20年間
45.5億円/年
次の20年間
50.3億円/年
建替え
大規模改修
積み残し
大規模改修
市民関連施設の平均投資
的経費
29.5
億円
(平成
18
年度~
21
年度)
大規模改修を実施し 長寿命化を図ることで 建替え時期が移行
大 規模 改修を 実施し 長 寿命 化を図 ること で建替え時期が移行
(4)建替えと中規模改修と大規模改修の併用
大規模改修検討時に築後55年を経過した建物は、残りの寿命が短いため中規模改修を実施 します。その他の建物は大規模改修を行い、それぞれ70年まで活用して建替えるものとし ます。
建替えや大規模改修、中規模改修を併用して施設整備を行うことにより、最初の20年間で かかるコストを年平均45億円から42億円へと6.7%縮減することができます。また、40
年間では約1,915億円から1,850億円と3.4%縮減します。
27 S28 S29 S30 S31 S32 S33 S34 S35 S36 S37 S38 S39 S40 S41 S42 S43 S44 S45 S46 S47 S48 S49 S50 S51 S52 S53 S54 S55 S56 S57 S58 S59 S60 S61 S62 S63 H1
築50年以上 築40~49年 築30~39年
1万2,295㎡
(4%) 11(34%)万3,968㎡ 9万8,397(29%)㎡ ( %
築50年以上 築40~49年 築30~39年 築20~29
12,271㎡ (4%) 115,711㎡ (34%) 100,033㎡ (30%) 42,795㎡ 小中学校
市民文化系施設
13 27 S28 S29 S30 S31 S32 S33 S34 S35 S36 S37 S38 S39 S40 S41 S42 S43 S44 S45 S46 S47 S48 S49 S50 S51 S52 S53 S54 S55 S56 S57 S58 S59 S60 S61 S62 S63 H1
築50年以上 築40~49年 築30~39年
1万2,295㎡
(4%) 11(34%)万3,968㎡ 9万8,397(29%)㎡ ( %
築50年以上 築40~49年 築30~39年 築20~29
12,271㎡ (4%) 115,711㎡ (34%) 100,033㎡ (30%) 42,795㎡ 小中学校
市民文化系施設
13
大規模改修 中規模修繕
改修時に築後55年を経過した建物は、 中規模修繕を実施し建替え時期を待つ。
(億円)
合計 年平均 合計 年平均
建替え 93.14 4.66 704.12 35.21 797.26 19.93
大規模改修 233.81 11.69 98.76 4.94 332.57 8.31
修繕 202.60 10.13 202.60 10.13 405.20 10.13
積み残し建替え 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
積み残し大規模改修 314.66 15.73 0.00 314.66 7.87
合計 844.21 42.21 1,005.48 50.27 1,849.69 46.24
平成26~45年 平成46~65年 40年合計 年平均
0 20 40 60 80 100 120 140 H 18 H 19 H 20 H 21 H 22 H 23 H 24 H 25 H 26 H 27 H 28 H 29 H 30 H 31 H 32 H 33 H 34 H 35 H 36 H 37 H 38 H 39 H 40 H 41 H 42 H 43 H 44 H 45 H 46 H 47 H 48 H 49 H 50 H 51 H 52 H 53 H 54 H 55 H 56 H 57 H 58 H 59 H 60 H 61 H 62 H 63 H 64 H 65
億円
40
年間
46.2
億円
/
年
40
年間
1,850
億円
最初の
20
年間
42.2
億円
/
年
次の
20
年間
50.3
億円
/
年
建替え
大規模改修 積み残し 大規模改修
市民関連施設の平均投資 的経費29.5億円
(平成18年度~21年度)
改修時に築後55年を経過した建物は、
中規模改修を実施し建替え時期を待つ。
平 成46~65年度 40年間 合 計 平 成26~45年度
(1)耐震診断時のデータによる簡易評価
① 対象施設
平成31年~35年の5年間の実施対象施設のうち、旧耐震基準(昭和56年以前)で 耐震診断済みの建物
② 評価方法
耐震診断報告書における構造躯体データのうち、圧縮強度とコンクリートの中性化深さ のデータを用いて下表の通り評価します。
なお、中性化の進行速度による評価によって、理論上は構造躯体の残存耐用年数を求め ることができますが、ここでは過去の調査データを用いており、サンプル数も限られてい ます。そこで、今後の長寿命化改修の可能性を把握することを目的に評価することとし、 期待できる使用年数が70年未満であるか70年以上であるかを判定することにします。
③ 評価結果
耐震診断報告書に基づく今後期待できる使用年数を算定した結果、学校施設2棟、スポ ーツ・レクリエーション施設1棟を除き、対象施設は70年以上使用できる可能性がある ことが分かりました。
70年未満と判定された学校施設(柏小学校)2棟については、大規模改修計画施設の ため、詳細調査を実施した結果、長寿命化が可能と評価されました。
スポーツ・レクリエーション施設(練成館)については、中規模改修施設のため、改修 時に適切に対応します。
ア.圧縮強度 低強度(13.5N/mm2未満)の場合は、長寿命化に適さない可能性があると判断
イ.中性化深さ 現時点で鉄筋に達しているものは、長寿命化に適さない可能性があると判断
ウ.中性化の進行速度 現時点で、理論値よりも進行が早ければ、長寿命化に適さない可能性があると判断
70年未満 70年以上
2棟 32棟 34棟
(5.9%) (94.1%) (100%)
1棟 15棟 16棟
(6%) (94%) (100%) 用途 期待出来る使用年数の判定
学校施設
その他
計
長寿命化できない可能性がある建物 長寿命化できる建物
(2)詳細調査の実施
① 目的
学校施設は規模が大きく、保全計画を進める上での影響が大きいため、3校をサンプル として詳細調査を実施し、大規模改修が可能な躯体状況を確認します。
② 対象施設
大規模改修計画のある学校のうち3校(幸小、大山小、松中小)の校舎と体育館
③ 調査方法
専門業者により、コンクリートコア抜き調査とハツリ調査を実施。併せて、外観目視調 査により、コンクリートのひび割れ、剥離等の程度を確認。
④ 調査結果
調査の結果は以下の通りです。
施設名 棟名 調査① 調査② 調査③ 調査④ 調査⑤ 調査⑥
大山小 管理教室棟 ○ ○ ○ ○ ○ ○
特別教室棟 ○ ○ ○ ○ ○ ○
渡り廊下棟 ○ ○ ○ ○ ○ ○
体育館棟 ○ ○ ○ ○ ○ ○
幸小 管理教室棟 ○ ○ ○ ○ ○ ○
教室棟 ○ ○ ○ ○ ○ ○
渡り廊下棟 ○ ○ ○ ○ ○ ○
体育館棟 ○ ○ ○ ○ ○ ○
松中小 校舎棟 ○ ○ ○ ○ ○ ○
体育館棟 ○ ○ ○ ○ ○ ○
対象建物はいずれも70年以上使用できる可能性があることが分かりました。 写真 はつり調査
劣化現象調査
調査① 亀裂調査
調査② 傾斜・不同沈下調査
調査③ 剥離・雨漏り調査
調査④ 鉄筋腐食度調査
調査⑤ コンクリート強度調査
調査⑥ コンクリート中性化調査
図 調査フロー
既存データ 目視調査 コア
採取・
は
つ
り
劣化度判定
写真 コンクリートコアの採取
専門業者に委託